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ぐったりとするレチッタを背負い、ガジュはなんとか村に戻った。半月ぶりに我が子と再会したレチッタの両親ははじめ大喜びで涙を流していたが、それも彼の傷だらけの全身を見るまでだった。
疑わしきは罰する、ということで最も疑わしいブルギィの旦那のところに、父親が乗りこんだらしい。だが、芳しい結果は得られなかったようだ。
ブルギィの旦那はいかにも弱々しい老人といった様子で、妙な言動も村外れに住んでいるのも、痴呆のせいではないかという結論に至った。
他の村人ももちろんレチッタの帰還を喜んではいたが、濡れ衣を着せられたブルギィの旦那に同情する声もいくらか上がった。
結局、レチッタも何も話そうとしなかったことでこの件はいわゆるお蔵入りとなり、今まで誰もその真相を知らない。当事者であるはずのレチッタに聞くことも、強要しているようでためらわれた。そうして、あるべきはずの事実は闇に葬られた。
そこから、2年の月日が流れた。傷もとうにふさがり、しばらくはところ構わずずっとガジュについてまわっていたレチッタも、今はかつてと変わらぬ明るさを取り戻している。
だから、気づくこともなかったのだ。酔った友人を家まで送り届ける心優しい青年。当たり前みたいなこの夜を皮切りに、あのような恐ろしい日々が始まるなど。
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