目覚めたときには

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 ブルギィは、こみ上げる嬉しさを隠しきれないといった様子で意地悪げな笑みを浮かべていた。梳かされていない白髪交じりの髪と、こけた頬が見る者に不気味な印象を与える。 「健康な男の肉体、それはすなわち頑丈性と耐久性。如何なる実験にも耐え得る強いモルモットがあるのは良いことだ」 「ふざけんなてめぇ、何言ってんだよ。やっぱりお前だな、レチッタをさらったのもおかしくしたのも、怪我させたのだって。・・・・・・笑えねぇよ、いい加減にしろ!」 「おやおや、私を呼ぶには随分とぞんざいな呼称だな。博士と呼び給え、敬意を込めて。これから、私は、いわばお前にとっての創造神だ。敬え」 「は?黙れよ、人格を、なんだって・・・・・・」  ブルギィのあまりにも突拍子もない言葉に、思わず語尾が震えた。理解するための頭がないわけではない。しかし、どんなに信じがたい事実だったとしても脳は動く。かけられた言葉の真意が、如何に残酷であろうと。  怒りが潮のようにひいていく。自分はモルモット。つまりこの男にとっての実験体だ。人間を使った実験となれば、さすがにこの世界でも法に触れる。違法なことに手を染めているという噂は事実だった。  そもそも、後ろ手に縛られている時点で丁重に扱われるわけがないのだ。そして今、自分を閉じ込めるこの透明なガラスの壁。隙間のない鳥籠のような形状の檻にガジュは入れられ、外から丸見えの状態だった。  動物園でじろじろ見られる動物のようで、心臓がどくりと跳ね上がる。  すぐにレチッタを連れて逃げなくてはいけない。とにかくこれ以上ここにいてはまずい。そんな思考が脳裏を埋めていくが、ガジュは心のどこかでそれを否定していた。  幼馴染が既に、この男の魔の手に落ちているのはなんとなく分かっていた。
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