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3、そばにいて
ミナミは俺の後頭部にキスをすると、耳元に口を寄せた。
「スネちゃったの?可愛いね……」
「るせっ……」
「ふはっ。真っ赤……」
枕に顔を埋めるようにそっぽを向いた俺に、ミナミは笑いながら覆い被さった。
「離れろよ……!もう寝る!」
そう言ってミナミの声が聞こえないように俺は耳を塞いだが、ミナミはそんな俺の手を食んで、また笑った。
「えぇ、冷たいな~。もうちょっと付き合ってよ……」
「…………っ」
「俺だってずっとかなちゃんに会いたかったんだよ?」
かなちゃんが足りないよ、と甘えた声が降ってきた。
それがもし本当なら、これほど嬉しいことはない。だけどもし本当なら、一年も放置したりするはずがない。
ミナミの言葉を信じてしまいたくなって苦しい。
いっそカノジョ達のように、嘘だと割り切って甘えられたらいいのにとも思う。
「かなちゃん……かなちゃん……」
愛おしげに俺の名を呼ぶミナミの声に、否応なく心が震えてしまう。呼ばれる度に自分の顔や首筋が赤く染まっていくのを感じた。
「ねぇ、かなちゃん、本当にダメ?」
俺の首筋を舐めながらミナミが訊ねた。押し当てられたミナミのソレが再び熱を持っているのを感じて、俺の下半身にも熱が溜まっていった。
ミナミはそれを見逃さず、後ろから抱き締めるように俺の胸元や下腹部を手のひらでゆるゆると刺激し始めた。
「────っ」
俺の体を知り尽くした手が与える快感に、ピクンピクンと体が震える。枕に顔を押し付け声を殺しても、喉の奥から零れてしまう。
「ねぇ、もう我慢出来ない」
熱っぽい声でそうミナミは囁いて、俺の奥深くへと再び自身を穿った。
「あんっ……ぁっ、ぁあっ」
だらしなく開いた口からは、抗おうとしても抗えずに声が漏れ出てしまう。ミナミはそれを満足げに眺めながら、容赦なく俺を突いた。
「も、ナカっ……ずっと、ってる……んんっ!」
イキ過ぎて辛いと訴えると、ミナミは体勢を変えて、俺を自分に跨がらせた。
「かなちゃんが好きなように動いていいよ?」
「……なっ?!」
そんな事を言われても、もう姿勢を保つので精一杯だ。自分の体の重みで、ミナミが先ほどより更に深く入ってくるのすら止められない。
「深、いぃ……っ」
身を捩ろうとする俺の腰を、ミナミがガッチリと掴んだ。
「あとちょっと……かな?」
そんな不穏な言葉を口にすると、ミナミは下から俺を突き上げた。
「ちょっ……待っ……ぁっ──あっ!」
吐精して、その腕から逃れようとしては捕まえられ、また熱を与えられて吐精する……。そんな事を何度か繰り返した後で、ミナミは俺に優しいキスをした。
「かなちゃん、淋しかったの?」
「さびっ……かっ、たぁ」
「俺より良い人、いるんじゃない?」
「ヤダッ……やだぁ!……ミナミが、いぃ……っ!!」
何度も何度もイカされ、もう出すものも無くなり始めた頃の俺は、理性の下に隠した本音が漏れ出すのを止められなくなる。毎年こうだ。
だからミナミに抱かれるのは嫌なんだ。
──どうせ消える癖に。
「淋しい……もう、独りはヤダよぉ……」
「うん」
やっと言ってくれたね、とミナミが嬉しそうに言うのが聞こえた。
「もう、やだ……」
意識を手放す直前、俺は譫言のようにそう繰り返した。
「……もうどこにも行かないよ」
待たせてゴメンね、という声が遠くに聞こえた気がした。
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