3、そばにいて

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朝陽の中目覚めると、やっぱりミナミは居なかった。 「酷いヤツ……」 自分がカノジョ達にいつもしている事は棚に上げて、俺はそう独りごちた。 ミナミと初めて会った時19だった俺も、もう25になった。 若さ以外に取り柄のない俺なんて、そろそろレンタル彼氏としても需要がなくなる頃合いだろう。仮初めの温もりを与える役も、そろそろ卒業しなくてはならない。 ミナミが何歳なのかは知らないが、20代後半からせいぜい30代半ばだろう。あれ以来あのサイトにはアクセスしていないけれど、今もあそこに所属しているんだろうか?あの調子なら未だに客が引きも切らないだろう。 「俺は、どうやって生きていこ……」 俺は虚空に向かって深く息を吐いた。 そうだ。とりあえず引っ越そう。もうミナミが来るのを期待して待つのはやめる。 そう決意した俺の耳に、ガチャガチャとドアを開ける音が響いた。 「ミナミっ?!」 反射的に玄関へ駆け寄ると、小さなビニール袋と大きめの紙袋を提げたミナミが気まずそうに笑いながら入ってきた。 「かなちゃん起きたんだ」 「うん。ついさっき……じゃなくて……え??いや、どうして……?」 何をどこから訊いたらいいのか分からずに、俺はただオロオロとミナミの後に着いて部屋に入った。 「ロッカーに服預けてあったからさ、鍵と服、勝手に借りた」 「それは別にいいけど……そうじゃなくて!」 借りた服を返しに戻ってきただけ、ということだろうか?相変わらずミナミが何を考えているのか分からない。 “昨日の、『どこにも行かない』ってホント?” 一番訊きたい一言が喉につかえて出てこない。 「とりあえず朝ご飯食べよ?買ってきたから」 かなちゃんち冷蔵庫空っぽなんだもん、と言ってミナミはお湯を沸かし始めた。 「待って……。ねぇ、どういうこと……?」 うろたえる俺の頭をポンポンと叩くと、ミナミは優しく微笑んだ。 「ご飯食べたら、ちゃんと説明するね」 「…………」 ミナミから何を言われるのかと緊張しながら食べた飯は、全く味がしなかった。 「……かなちゃん、あのね……」 おにぎり3個とインスタントの味噌汁をペロリと平らげたミナミが、いつになく神妙な面持ちで俺の手を取った。 「……な、に」 平静を装ったつもりでも声が震える。ミナミに掴まれた俺の手がじっとりと汗ばんでいくのを感じた。 「あのね、俺……かなちゃんの恋人になりたい」 今更だけど、と付け足すミナミの声が遠くに聞こえた。 「………………???」 あまりに予想外の言葉に、俺は一瞬で視界がブラックアウトしてしまった。 これは夢?それとも現実?? 「……かなちゃん?え?!かなちゃん?!大丈夫?!」 焦るミナミの声はもう、俺の耳には届かなかった。
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