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入学書類を提出し教室でオリエンテーションになる。席についてすぐ厳しそうな30代位の女性が現れ、テキストを配られ運転の基礎知識や注意事項を説明した。最後に教習のスケジュール表が配られた。学科は1日2時間、他は実技教習だ。曜日ごとに担当教官が変わり、今日の担当教官は中山ーーあの女教官だった。
外に出て車に乗り込み、エンジンの掛け方やブレーキとアクセルの操作など基礎的なことを教わった。教官が全く笑わなくて怖い。
「走ってみましょう」
促されエンジンをかけハンドルを握る。手が震え額を汗が伝う。帰りたい。
「サイドブレーキ下ろして、アクセル踏んで」
言われた通りにすると車が走り出した。
「標識をよく見てね。次は左折」
パニックで右にウィンカーを出し「違う、左!」と注意された。高圧的な指導は更なるパニックを生む。左折する時縁石に擦りまた叱られ、坂道の下りでスピードを出しすぎ止められた。
教官がため息をつく。やはり私は出来損ない。来るべきではなかった。強烈な自己嫌悪に苛まれた。
「深呼吸をしましょう」
教官に言われ大きく息を吸い吐く。何度か繰り返したら落ち着いた。
「道路に出れば命懸けよ。少しの不注意や操作ミスで命を奪ってしまうこともあるから気をつけて」
「はい、すみません」
「自信さえつけばできるわ。落ち着いてもう一度やってみましょう」
「はい、お願いします」
その後の教習も散々だった。
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