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遊星は試験に落ちたらしい。
「おめでとう、彦りん」と湯気の上がる温泉の中手で水鉄砲をしながら、遊星は力なく笑った。
「最後のバック駐車で脱輪してさ。練習では上手くいってたのに……。俺っていざという時駄目なんだ。周りにも不真面目だとか駄目人間って思われる」
ここは曲がりなりにも社会経験を詰んだ、いや積んだ者として良い事を言わなくては。
「私も過去に、会社の上司に散々否定的な言葉を吐かれました。鬱を患い15年引き籠りました。
世間から見たら私は負け組ニートのキモオタ親父でしょう。でもここに来て分かった。何も出来ない、全てが駄目な人間なんていない。言いたい奴には言わせておきなさい。自分を本当に評価するのは自分だけ。
君は誰とでも分け隔てなく付き合える。それは才能ですよ。私も沢山救われました。自信を持ちなさい」
「そうだ、試験に落ちても死ぬわけじゃなし。次受かりゃ良いだろ!」
高岡が遊星の背中をバシンと叩いた。
「ありがとう、頑張るよ」
遊星が涙を拭った。
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