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やがてチャラ男は待合所に来た若い女の子達を口説き始めた。まだ吐き気と頭痛は止まない。
不意に戸が開き和服姿の40代位の女性が現れた。凛とした色白で小柄な女性だった。黒髪を後ろで纏めている。
「田端さんと辰巳さんですか?」
女性の声でピンときた。予約の電話対応をしてくれた人に違いない。
「そうだよーん」と額ピースで答えるチャラ男。
女性は微笑んだ。
「潮騒荘女将の叶律子です。夕飯の時間になっても来ないので、心配で迎えに来たんですよ」
久しく母と妹以外の女性と接していなかった私は、極度に緊張した。
「遅れてさ〜せん! 彦りん行くよ!」
重い体を引きずり外に出る。まだ回復していないが叶さんと会い力が漲った。心臓が高鳴りときめいている。久しぶりの感覚だった。
律子さんに促され、駐車場のマイクロバスに乗り込んだ。
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