5. 教習初日

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5. 教習初日

 翌日は朝5時に目が覚めた。今日から教習がスタートだと思うと、発汗、動悸、腹痛、下痢の症状が一気に押し寄せた。そうこうするうち朝食の時間になり食堂に向かう。  朝食は海鮮ビュッフェだ。生の鮪や鰹、海老、イカ、ウニ、ホタテ、卵焼き、雌株などが種類ごとに並んだ皿から好きな具をご飯に乗せられる。  遊星は女二人と一緒にご飯をがっついている。私は食欲もないのでご飯にわかめの味噌汁だけをかけ隅の席で食べることにした。  突然向かいの席にグラサンが座った。男は鮪と海老と卵が乗った飯を黙々と食べている。怖くて余計に食が進まない。早く食べようと飯をかきこんだ。 「それだけですか?」  律子さんが心配そうに訊いた。 「ちょっと食欲が……」 「良いね、ここの食事」  不意にグラサンが律子さんに声をかけた。 「ありがとうございます」 「都会にいたんじゃ、こんな美味いもん食えんからなぁ」 「夕飯も楽しみにしていてくださいね」  男はやけに楽しそうだ。  まさか彼も律子さんのことを?   私の気持ちを悟られてはならない。恋敵として邪魔になったら男は私を殺すに違いない。 「ご飯美味しかったよ、ごちそうさん!」  遊星達が笑顔で食堂を出ていく。  私もこんな風に律子さんと気軽に会話ができたら。  遊星が少し羨ましくなった。
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