菜々と真緒、ふたりの祝祭

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菜々と真緒、ふたりの祝祭

 今日がクリスマスイブなのに気付いたのは、二十一時、休日出勤のオフィスで納期ギリギリの案件を終わらせた時だった。 「え、嘘。今日がイブなのを忘れてる人とかいるんだ。菜々(なな)さん、カワイソー」  向かいのデスクで同じ案件に立ち向かっていた戦友、もとい同期の真緒(まお)にそのことを告げてみると、からかうような視線とともに憐れみの言葉が返ってきた。 「いやいやいや。この状況で、私と真緒のカワイソー具合に差なんてないでしょ」  言い返すも、真緒のツッコミは止まない。 「今日の日付を見た時点で、気付かないのはヤバいよ」 「納品日って認識しかなかった」 「闇深すぎ。社畜かな?」 「『かな?』っていうか、社畜じゃない? 我々」 「違いますぅ。私はただの仕事好きです。もっといい条件の職場が見つかれば、こんな会社、いつでも辞めてやるよ」  オフィスに私たちしかいないのをいいことに、真緒は本音をダダ漏れさせている。この子、去年の今頃も同じこと言ってたなぁって思ったけど、カワイソーだから口には出さなかった。
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