菜々と真緒、ふたりの祝祭

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「そういえば菜々さん、SNS見てないの? 私、皆のハッピークリスマス投稿を見て憎しみの炎を燃やしながら、休日出勤の原動力にしてたよ」 「真緒の方が闇深いな! いや、SNS見る余裕もなかったし。だってさぁ、先月からクリスマスムードだったじゃん、この国。今さら、『今日はクリスマスイブですよ。パーチーしましょうよ』って言われてもさ」 「あはは、パーチーって! 相変わらず面白いねぇ、菜々さんは」  二人とも、長いことPC画面を見ていたから瞳は充血しているし、乾燥したオフィスのせいでお肌はカッサカサ。お互いイブの予定はないし、それ以前に彼氏もいない。カワイソーな私たちなのだ。  真緒が場の空気を変えるように、明るい口調で提案する。 「まあ、ようやく仕事が一段落したんだから、もっと達成感を味わおうよ。二人でお祝いでもする? クリスマスじゃなくて、案件が終わったお祝いね」 「それだ。ある意味、キリストの生誕以上の祝祭だ」  ようやく盛り上がれた私たちは、不謹慎なことを言いつつ、意気揚々とオフィスを後にした。  きっと、疲れがピークに達していて、脳がマヒしていたんだと思う。日本で二十五年も暮らしているのに、クリスマスイブがどんな日なのかを忘れている二人だった。
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