菜々と真緒、ふたりの祝祭

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「おっけー。あ、菜々さん」 「何?」 「せっかくだから、ツリーと一緒に写真撮ってあげよっか?」 「えっ! 何で?」 「菜々さんのスマホの写真フォルダに、一枚くらい楽しいクリスマスフォトをと思って」 「余計なお世話過ぎる……! いいよ、休日出勤でボロボロの私じゃ、キラキラのツリーと釣り合わないし」 「おっ、ダジャレかな?」 「違う! それに、今日の服、全然華やかじゃないし。グレーって、余計顔が疲れて見えるの。美人にしか似合わない色だよね。流行色だからって、買うんじゃなかったな」  私は今着ているノーカラーのウールコートを指差す。先月買ったばかりのライトグレーのコート。試着した段階ではいいなって思ったんだけど、それは照明が眩しいアパレルショップの中だけのこと。自宅の鏡の前で着ると、何だか地味……。中に着る服も、無難な色柄のものしか持ってないから、どうにも垢抜けないのだ。  真緒は「う〜ん……」と唸りながら、私の頭から爪先までを眺めた。そして、 「じゃあ私が、菜々さんに華やぎをプレゼントするよ! ちょっと待ってて」  そう言い残すと、クリスマスマーケットへと駆けていった。 「えっ、ちょっと、真緒……?」  私は驚いて、人混みの中へと消えていく彼女を見つめた。たまに、こういう唐突な行動を取るんだよな、あの子。華やかさゼロの寂しい私に、グリューワインでも買ってきてくれるんだろうか?
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