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「お待たせ〜!」
戻ってきた真緒は、意外なものを手にしていた。
「マフラー……?」
「うん。そこのお店で買ってきたよ」
真緒は広場の端を指差す。マーケットの中のひとつに、カラフルなニット雑貨のお店があった。
「へえ。可愛いね、それ」
マフラーは赤と白のアーガイル柄で、お洒落な真緒に似合いそうだ。
「でしょ? これを、こうやって……」
「えっ?」
真緒はマフラーを私の首に巻いた。肌寒かった首元が、ニットの温もりにふんわりと包まれる。
「うん、華やか! 顔色も明るく見えるし。我ながら、ナイスセンスだなぁ〜」
私を見て何度も頷く真緒に面食らった。
「あの、これって……」
「言ったでしょ、私が菜々さんに華やぎをプレゼントするって。これでクリスマスも怖くないね! ツリーと一緒に写真も撮れるよ」
そう言ってスマホを向けてくる真緒に対して、私はまだ戸惑いを隠せない。
「え、このマフラー、私に?」
「うん。クリスマスプレゼント。菜々さんはとっても可愛いんだから、自信持たなきゃダ〜メ」
全く、この子は。あんなにクリスマスを憎んでいたのに、寝返っちゃって……それも、私なんかのために、お金使っちゃってさ。
そうなんだよね。真緒って普段は率直でナマイキなんだけど、私がちょっとでも自分を否定するようなことを言うと、こうやって気持ちを上げようとしてくれるんだよ。
だから、一緒にいたくなる。
正直、彼氏なんていなくても、真緒さえいればいいなって思うくらいに。
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