第1章

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(ここに来て、もうずいぶんと年数が経ったわね)  庭園をぼうっと見つめつつ、乙葉は過去に想いを馳せる。 (お父様、お母様。……浅野(あさの)家を守れなかった、愚かな私をお許しください)  度々、こういう風に心の中で両親に謝る。それは、きっと罪悪感を消すための行為だ。所詮は自己満足でしかない。  でも、優しい両親のことだ。乙葉の選択を咎めはしないと思う。……完全な、想像ではあるのだが。 「……さぁ、いい加減お仕事に戻りましょう。頑張らなくちゃ」  しかし、そう思いなおして、呟いて。乙葉は仕事に戻ることにした。だって、今の自分は伯爵令嬢ではなく、末端の女中なのだ。のんびりとしていてお金がもらえるわけじゃない。  幸子はあまり好ましくないが、当主夫妻は朗らかないい人だ。あえて言うのならば、幸子にとんでもなく甘いことが欠点であることくらいだろう。 (あの子たちのためにも、私は働かなくちゃ!)  そう思いつつ、乙葉は次の仕事に移るのだった。
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