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 電気炊飯器よりもガス炊飯器の方がご飯が美味しく炊けると言ってはばからない蒼子さんの家に、ついに家庭用AIロボットがやってきた。  今流行りのAIロボット、Coguro(コグロ)。名前の由来は魚ではなく、個人宅用相談案内ロボット──英名 Consultation guidance robot for private homes の頭文字から取ったものらしい。  外観は可愛いらしいヒューマノイド型ロボット。蒼子さんの家ではぬいぐるみと同じように居間の飾り棚の上にちょこんと座らせている。  一人暮らしの蒼子さんを心配した両親が、コグロを購入して蒼子さんの家に送ったのだ。コグロは個人家庭に人気のAIロボットで、普段は人口音声で登録者と会話をしてくれる。事前に登録しておくと、体調のアドバイスや、病院への予約日時を案内してくれたり、住所地の天気と気温をサーチして「エアコンの冷房、または暖房を入れて下さい」と助言までしてくれる。ちなみにコグロを赤外線通信対応エアコンに繋げると、自動(オート)でエアコンをオン、オフにしてくれる機能もある。でも、空調設備の整った街中のマンションとは違い、蒼子さんの家の場合は夏の間中、縁側も廊下も窓を全開にしている一軒家なので、繋げていない。窓を開けっ放しでエアコンをオンにされると、電気代が怖いことになると予想できるので。  サーモグラフィー搭載のコグロは、検知内に体調不良の人間がいると、救急車を呼んでくれる機能もある。住所地は事前に登録したものを「119番」に音声ガイダンスしてくれるのだ。ついでに、事前登録していない人間が室内にいると「どちら様ですか?」と尋ねてくれる。ここで登録したり、または事前に登録者が「ゲスト〇名がくる」と言っておかないと、「警察に通報しますか?」と言って脅してくる。空き巣対策機能なのだそうだ。通報機能を解除をし忘れると怖いので、蒼子さんの家では警戒音声機能はオンのまま、警察の「110番」通報機能はオフにしている。山裾の一軒家といえど、ここは治安が良いところだから。  蒼子さんの家にほぼ毎週末通っている私も、勿論コグロに登録した。後日やってくる私の両親も住所地と電話番号を登録する予定だ。万一、蒼子さんが救急車で運ばれた際、コグロがそれぞれの登録者に連絡をしてくれる手筈となっている。  ところで、目下の私の悩みは、コグロは普段ほとんどAIでいてくれるけれど、たまに人間がコグロの人口音声で対応してくれるというサービスについてだ。
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