アルバム

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「アルバムをめくる」という言葉もなくなっちゃうのかな?と、実家の押し入れの奥から出てきた幼い頃のアルバムをめくりながら、涼子は思う。  今は何でもデジタル。スマホのアプリをいじれば写真はすぐ見られる時代。それはそれで便利だけど、でも、こうして古ぼけたアルバムを「めくる」という行為が良いんだよなって思うのは昭和の人間だからなのかな  涼子は、年老いた母が介護付きマンションに引っ越すための実家仕舞いのための片付けに、久しぶりに帰郷した。街は幼い頃見ていた懐かしい街並みの面影は薄れ、時代から取り残された鄙びた過疎の街となっていて、何とも寂しい気持ちになるけれど。  何十年かぶりでめくったアルバムの中には、若くて元気溌剌な母と笑顔がはじける幼い自分がいる。涼子は思わず笑顔になる。今はもう、母はすっかり年老いてしまい、涼子自身もアラフィフ。随分と長い時間が経ったものだ。  そうだ、片付け終わったら、お母さんと一緒に写真撮ろう。この写真と同じように、縁側で。そして、また十年後に久しぶりに見て「わー、二人とも若かった!」って二人で笑い合いたいな。
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