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「咲がいるからだよっ!! 雨が好きなのはっ!!」
目を強く瞑って声を押し出す。
もう1人のつまらない僕が必死に口を抑えるが、僕は藻掻いて、振りほどいて伝える。
「咲の顔見ると顔が赤くなって恥ずかしいけど、ビニール傘からだったら咲の顔を見れるんだよっ!! 雨の日だけは咲を見れるんだ......!! だから雨が好きなんだっ!!」
目を開けると、咲が足を止めて僕に視線を向けていた。
「僕はっ!! 僕は......っ!!」
だが、そこから言いたい言葉が出てこない。
伝えたい言葉が出ない。
咲に聞いてほしい言葉が出ない。
でも、伝える恐怖よりも......僕のせいで咲が誤解して苦しむのだけは......嫌だし耐えられない──。
「──僕は咲が......好きなんだ!!」
心に閉じ込めてたものが全部吐き出して、体の力が抜けていく。
無言の2人に、雨の音が割り込んでくる。地面に叩きつけられる雨音が2人しかいない公園に木霊する。
咲はなにを考えてるんだろう。
気持ち悪いと思われただろうか。嫌われただろうか。
(まぁ、誤解が解ければ......いいか)
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