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すると咲は僕に近づいてきた──。
一歩一歩近づいてくる咲に、僕は無意識にビニール傘で顔を隠す。
そして僕の眼の前まで近付いた咲は立ち止まり、不思議に思った僕は透明なビニールから咲の顔を見ようとする。
その時だった──。
咲が僕のビニール傘の端を掴んで上に捲り、僕の顔を覗き込んできた。
「ねぇ......さっきのホント?」
久しぶりに見る咲の顔。好きな人の顔。
咲と目が合った僕は、自分でも熱を感じるほど一瞬で顔が赤くなり、とっさに咲から目線の反らした。
「ホントなんだ......遊ってあたしのこと好きだったんだ......」
僕の赤面した顔を見て確信したらしい咲だが、僕は赤面した顔を見られる恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
「ねぇ......顔見せて?」
「......えっ?!」
咲はさらに僕に近づくと、持っていた折りたたみ傘を雑に地面に置いて、僕の顔に両手を伸ばす。
白くてキレイな手が僕の顔に近づいて......そして、
──触れる。
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