11人が本棚に入れています
本棚に追加
──相合い傘で帰り道を歩く。
「そんなにくっつかれると歩きづらいよ......」
傘を持つ僕の左腕を、咲は両手で絡めるように触れてくる。
「傘小さいから、こうしないと濡れるもん。あたしの折りたたみ傘は中まで濡れちゃったし。それに恋人だしいいじゃん?」
さっきの悩んでいる時とは大違いの表情。いつもより明るい咲に僕は少し不安になりながら聞く。
「......僕なんかでいいの?」
すると僕の腕を握る咲の両手に力が入る。
「......遊じゃなきゃ嫌なの」
咲の真っ直ぐの瞳。
前までの僕だったらすぐ目を反らしていただろう。でも今は違う。
僕は目を合わせて伝える──。
「僕も......咲じゃないと嫌だ」
それを聞いて咲が笑顔になる。
笑顔の咲を見て、僕もまた笑顔になった。
「──そういえば、なんで雨嫌いなの?」
ふと理由を聞けなかったことを思い出して聞いてみる。
「ん~~......それはね、雨の日は傘で遊の顔見れないからだよ。すっごく寂しくて辛くて嫌だったの」
「ご、ごめん」
僕はとっさに謝る。
「でも今は雨が大好きだよっ! 特別な日になったし、それに相合い傘もできるしねっ!」
僕たちは言葉を投げ合いながら、帰り道を足並みを揃えて歩いていく。
次の日もまた次の日も、雨が降っても僕たち2人の恋色は色褪せることはないだろう。
僕はビニール傘が好きだ。
透明なビニールから差し込む光が咲の笑顔を輝かせるから──。
最初のコメントを投稿しよう!