「ねぇ......顔見せて?」

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──相合い傘で帰り道を歩く。 「そんなにくっつかれると歩きづらいよ......」 傘を持つ僕の左腕を、咲は両手で絡めるように触れてくる。 「傘小さいから、こうしないと濡れるもん。あたしの折りたたみ傘は中まで濡れちゃったし。それに恋人だしいいじゃん?」 さっきの悩んでいる時とは大違いの表情。いつもより明るい咲に僕は少し不安になりながら聞く。 「......僕なんかでいいの?」 すると僕の腕を握る咲の両手に力が入る。 「......遊じゃなきゃ嫌なの」 咲の真っ直ぐの瞳。 前までの僕だったらすぐ目を反らしていただろう。でも今は違う。 僕は目を合わせて伝える──。 「僕も......咲じゃないと嫌だ」 それを聞いて咲が笑顔になる。 笑顔の咲を見て、僕もまた笑顔になった。 「──そういえば、なんで雨嫌いなの?」 ふと理由を聞けなかったことを思い出して聞いてみる。 「ん~~......それはね、雨の日は傘で遊の顔見れないからだよ。すっごく寂しくて辛くて嫌だったの」 「ご、ごめん」 僕はとっさに謝る。 「でも今は雨が大好きだよっ! 特別な日になったし、それに相合い傘もできるしねっ!」 僕たちは言葉を投げ合いながら、帰り道を足並みを揃えて歩いていく。 次の日もまた次の日も、雨が降っても僕たち2人の恋色は色褪せることはないだろう。 僕はビニール傘が好きだ。 透明なビニールから差し込む光が咲の笑顔を輝かせるから──。
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