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「あっほら、遊見て!? こっちの傘とかよくない?」
母さんが別の傘を指差す。
持ち手が木目調で高級感がある傘。たしかにオシャレだけど、
(布地......)
ネイビーの布地の傘。
「......それじゃ駄目なのー」
僕はカートを動かして歩きだす。
洗剤やら柔軟剤やら色々買い物カゴに入っていてカートは重くなっていた。
僕は腕に力を入れてカートを動かしていく。
「ほら行くよ。ティッシュ買うんでしょ」
僕が歩き出すと、後ろから母さんが少し文句を言いながら小走りで追いかけてきた。
──忘れてたティッシュを買い物カゴに入れてレジに向かい、精算を終えて帰ろうと出口に向かった。
買い物袋で手を痛くしながらホームセンターから出ると母さんが僕を呼び止めた。
「たこ焼き売ってるよ遊っ!! 食べよっ!! 買っちゃおっ!!」
子どものような綺麗な瞳をして、露店のたこ焼き屋を指差して訴えてくるが、僕は落ち着いた声で母さんに言う。
「......太るよ?」
するとゆっくりと母さんの表情が変わっていく──。
(あ......やばい......!!)
子どものような無邪気な顔から、冷徹な殺し屋のような殺気がある表情に変わっていく。
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