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「指名ありがとうございます。
フタバです」
その人に、笑顔を向ける。
最近はフタバの名前が自分自身馴染んできている事もそうだし、
こうやって、指名も貰えるようになってきた。
キャバ嬢としての仕事に段々と慣れてきた。
「あ、フタバちゃん!
横に座って?」
私を指名したその人の第一印象は、明るく社交的で優しそうで爽やかな男性。
つまり好印象。
歳は30歳前後?
それにしても…。
私への指名は新規なのだけど、場内での指名ならともかく、
初めから無名のような新人の私を指名してこの店にやって来るなんて…。
頭の中に、疑問が湧く。
「お兄さん、誰かの知り合いですか?」
知り合いがこの店のお客さんで、その人から聞いて私を指名してとかなら、なくはないかもしれないから。
それでも、私を?と疑問。
「ん?まぁ、知り合いっちゃあ知り合いかな?
永倉二葉」
笑顔を、浮かべているのに。
永倉二葉の名前がこの人の口から出る時。
ほんの少し、この人を纏う空気が冷たくなったように感じた。
「それより、フタバちゃん。名刺ちょうだいよ」
「あ、はい。
フタバです。よろしくお願いします」
名刺入れから自分の名刺を取り出し、この男に手渡す。
私の手がほんの少し震えている。
「じゃあ、俺もあげる」
そう言って手渡された、名刺。
聖王会 鈴城組 高崎康生
そう、書かれている。
「せいおうかい。すずしろぐみ。
たかさきこうせい、って読むの。
て、一々言わなくても、それくらいの漢字なら読めるよね?
ほら、フタバちゃん俺の名刺見て固まってるから、読めないのかな?って」
アハハ、と笑っているけど。
怖い、と思ってしまうのは、
この人がどこかの組のヤクザなのだと知ったからだろうか?
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