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ボク、あの人の荷物を持ってあげたいです
ふと目の前に、ナナさんよりうんと年上の女の人が、杖を突きながらゆっくり歩いているのを見つけました。
なんだか持っている買い物袋が重そうに見えます。
『ナナさん、ナナさん。ボク、あの人の荷物を持ってあげたいです』
「え?」
ナナさんがボクの視線の先をたどります。
「ああ。あの人ね」
『はい! 困っている人のお手伝いは、ヒーローへの第一歩です!』
ボクはナナさんを見上げながら尻尾をブンブンと振りました。
「そうね。じゃあ、ちょっと声掛けてみようか」
ボクが話しかけても、フツウは聞こえないので、ナナさんが頼りです!
ナナさんがその人に声を掛けてくれました。
「あの……すみません、奥さん。えっと、うちのコウが、奥さんのお手伝いをしたいみたいで。お荷物お持ちしてもいいですか?」
すると振り向いたその奥さん(年上の女の人のことを『奥さん』と呼ぶのですね……)は、嬉しそうな表情になりました。
「あらぁ。重くて困ってたの。ありがとうねぇ」
奥さんはナナさんに買い物袋を預けた。
「じゃあ、申し訳ないけど……お願いしたいわ」
「はい。じゃあ、コウ。これ運んでね」
ナナさんが荷物をボクの背中に乗せてくれました。
うっ、思ったより重い……。
「こ……コウ、大丈夫?」
ナナさんが心配そうに聞いてくれました。
『大丈夫です! 任せてください!』
ボクは一歩、また一歩と足を出します。
足なんかよろけていないのです!
「コウ……。私も手伝うよ」
ナナさんがボクの背中の荷物をひょいっと持ちました。
いとも簡単に。
『あ……』
ボク、役に立たなかったな……。
ボクがシュンとして尻尾を垂らしていると、ナナさんがボクの顔を覗き込みます。
「コウは奥さんと一緒に歩いてあげてよ。坂道だし、転んだら大変だから。見守ってあげて。ね?」
『! はい。任せてください!』
これは責任重大です!
ボクは奥さんが転ばないように、一生懸命気を付けながら一緒に歩きました。
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