ボク、あの人の荷物を持ってあげたいです

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 しばらく行くと坂の途中でその人が立ち止まりました。 「ここが私の家よ。荷物持ってくれて、一緒に歩いてくれて、ありがとうね」   生垣の向こうに、おうちがあるみたいです。  奥さんは持っていたハンドバッグから取り出した鍵で開けた戸をガラガラと横へ動かしました。 「失礼します。荷物、ここに置きますね」  ナナさんが奥さんに断って、玄関に入って、一段高くなっている床に買い物袋を置きます。  奥さんはその買い物袋の中に手を入れて、さくらんぼのパック取り出してナナさんの前に持っていきました。 「独り暮らしで誰にも手伝ってもらえないから、本当に助かったわ。これ、お礼よ」 「いえ、そんな……」  ナナさんは胸の前で手を振って断ろうとしています。  けれど、奥さんはにっこり笑いました。 「本当に助かったから。少ないけど貰って? ね?」 「……返ってすいません。じゃあ、いただきます」  ナナさんが両手でさくらんぼのパックを受け取って、ぺこりと頭を下げた。 「コウちゃんも、本当にありがとねえ」  ボクを撫でてくれた奥さんの手は優しくて温かいのです。  ナナさんは肩に掛けていたバッグから喫茶店の連絡先が書いてあるカードを取り出して、奥さんに渡しました。 「もし困ったことがあったら、いつでもここに連絡くださいね」 『ボクも、何でもお手伝いしますから』  ボクも尻尾を振りながらわん! と鳴きました。 「本当に、ありがとう」  手を振る奥さんに見送られながら、ボクたちは散歩(パトロール)を再開します。
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