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 ─── どこから来て、どこへ行くのか。  その答えは多分、いやきっと、この世界を隅々まで探し回った所で見つからないだろう。だけど僕はその答えを必死に探したし、言葉にして口に出すことで初めて、拝み屋として生きて来た自分自身の存在意義を示せた筈である。  やはり僕は最後まで無力だった。僕が僕であることの理由を見失いそうになる程、自分の力のなさに打ちのめされた。目の前の人間を救うことはおろか、寄り添うことも出来ずにただ立ち尽くすだけだったのだ。  僕はこの先どんな顔をして彼女に会えばいいのだろう。ひょっとしたらもう二度と、僕たちはあの頃のように無邪気な笑顔で冗談を言い合うことなど出来ないかもしれない。 「この世を地獄に変えてでも」  彼女はそう言った。それは人を悪し様に罵ったことのない彼女の口から出た唯一の、そして最初で最後の呪詛だろう。  拝み屋として、僕は彼女の呪いを受け止めるわけにはいかなかった。けれども、人として、友として、父として、僕は彼女の打った呪いを甘んじて受け入れてもいいと、本気でそう思ったのだ。
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