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「アイドル好きなの? 私もアイドル好きで、おっかけしてるんだ。ドルオタ? っていうのかな?」  体験入部が終わり、帰ろうとしたら可愛い子に話しかけられた。 「あ、えっと」 「私、立木さき。くみこちゃん、だよね?」 「そう……だね」 「よろしく」  握手を求められる。握り返す。小さい手だ。私の大きな手と違う。  さきは髪を金色に染めて高い位置でポニーテールにしている。前髪は動かない。きっとしっかり固めて来ているのだろう。 「それで、どのアイドルが好きなの?」 「えーと……」  初対面の相手に推しのことなんか話しても良いのだろうか? でもこの人は私のことを知りたくて聞いてる。なら、話してもいいのかな。  さきが先に校舎を出ていく。私は彼女についていく。もう日は沈んでいる。すっかり夜だ。  私はこっそり伝えるみたいに、いつもより小さな声で話してみる。 「K-POPのヤンウンっていうグループのね、セヨンっていう人が好きだよ」  不安な中、ちらりと相手を見る。 「へー。今人気だよね」  そう言うとさきは続けて「でもどうせ今だけでしょ」とぼそっと呟いた。  は?  私の歩みが一瞬止まって、我に返ってまた歩き出す。
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