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「ダンスは難しくない。基礎をしっかりやって、練習もちゃんとやれば誰でもできる。少なくとも、ここにいるみんなは大会に連れて行こうと思ってる、私は」  おー、と声が上がる。コーチと紹介されたスタイルの良いおばさんが話をしている。  ダンス部の体験入部に来ていた。二十と少しの人数の新入生と一緒にダンスルームに座っている。男女混合のダンス部だ。先輩方が私たちを優しそうな目で見ている。  私の他は可愛い、かっこいい子ばっかりで、私だけ浮いているような感じもする。しかもみんなが私をちらちら見てくる。185センチあるから。 「じゃ、そこのあなた」  コーチが私を指差す。 「は、はい!」 「前に出てきなさい」  え、という口のまま私は立ち上がる。今の話のどこに私を呼ぶ要素があったのだろうか。  前に出る。みんなが私を見る。見られるのは得意じゃないから、緊張する。 「随分運動をしているみたいだね」 「え! あ、その、痩せたくて夏からめっちゃ運動してます!」 「おおー、いいね。何か目的でもあるのかい?」 「その! 好きなアイドルのファンとして! 恥じない体型になるためです!」  部屋がざわつく。あぁ、言ってしまった。  いや、最初は自分のためだったのだ。いつしかセヨン様のためになってしまっていた。 「静かに! 今は話を聞く番だよ!」  先輩が喝を入れる。途端に周りが静かになる。 「いいね。そういうのは大事だよ。もしかしてダンス部に入ろうとしてくれてるのも、それが影響してる?」 「はい……こんな身長でも、踊れるんだったらいいなって」 「もちろん踊れるに決まっているさ! 身長もあって、運動もしてる。いいじゃない、あなた。名前は?」  褒められた。嬉しくて泣きそうになりながら答える。 「山田……山田くみこです!」
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