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8.別れ/新学期
季節は、桜が少しづつ満開を迎え始めている4月。
春休み前の終業式の日。
私は、智樹君との別れを決心したのだ。悠との話し合い、相談の末に。
だが、いつ話をしようか迷っていた。
すると…。
「今だよ今!
じゃないと絶対にダラダラとその関係を引き伸ばすんでしょ?」
悠は、とても私のことを理解している。いつも、めんどくさいと思ったことや言いづらい事は後回しにしてずっと続くという事が何回もあった。
「うん。やっぱりそうだよね…。」
と、私は友達に言われ智樹君の元へと向かった。
掃除前だったから、皆各自の場所へと移動を始めている。私は、その流れに逆らうように心の教室へと向かった。
階段を下り、智樹君の掃除場所についた。
鼓動が速くなる。彼を傷付けたくないし泣かせたくは無い。それに、晴也にも手伝ってもらったのに申し訳ない。でも、ここで言わないと私は後悔すると思う。
コン、コン、コン
悠が、扉をノックする。
「ほら、言わないとー。時間ないよ。」
急がされ、更に緊張する。
そして言われるがままに、私は正面を見た。
「あ、咲希。ここまで来てどーした?」
智樹君は、いつもの通りだが少し怪しんでいるのが分かった。
「あ、あの…。掃除前にごめんね。大切な話があって来たの。」
フゥー、気が乗らないなー。
「あー、なるほど。ちょっと待ってね…。」
と言って、扉を1度閉められてしまった。
気まずい!!!
ガラガラ、ガラ
扉が開いた。そろそろ言っても、いいのかな…?
「それで、どうしたの…?」
心の準備はもう出来ている。後は、言葉にするだけだ。
「大事な話があるの⋯。私と別れて欲しい。」
言ったあとは、少し身体が楽になった気がした。自分から好きっていう気持ちを受け止めたのにも関わらず、別れを告げて、肩の荷を下ろそうなんて人でなしなのは分かっている。でも、これがお互いの為なんだと思う。
きっと…。
「そ、そっか....。分かったよ。」
そんなに悲しい顔をしないで…。
でも、決めたことだから..、ごめんね。
「うん。今までありがとう…。」
辛い…。
そして、自分の掃除場へと向かった。
「咲希、大丈夫…?
なんかごめんね。先走りすぎちゃったよね私。」
逆に、謝られるのもなんか胸が苦しいよ…。
「ううん。そんな事ないよ…。どっちにせよ言う予定だったから。付き添い、ありがとう!」
「うん!」
私と智樹君の縁は、プチンと糸を切るかのように静かに切れた。
今まで本当にありがとう。
こんな私を好きになってくれて、沢山の好きをくれてありがとう。
私の事を受け入れてくれてありがとう。
異変に気づいてすぐに来てくれてありがとう。
色々な事を教えてくれたり、話を聞いてくれてありがとう。
あなたと過ごした、全ての時間は私にとって大切な宝物だよ。
こんな私を彼女にしてくれた事を心から感謝してる。
ありがとう!
そして、さようなら…。
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新学期のスタート。
2年生を迎えた私はまた智樹君と同じクラスになった。
少し罪悪感が心の底にあったが、それよりも春休みの期間で吹っ切ることが出来た。
これからの学校生活がどうなっていくのかは、まだ私にも分からない。
けれど、私は前に進み続けて行く。
ー きっとその先に、新たな出会いがあることを信じて。
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