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5.困惑/意識
この席に、少し馴染んできた1月。私は、ある不思議に気づいた。
それは、智樹君が何故か優しすぎるということ。
授業中に分からないところがあって、晴也に聞いたらたまたま同じ所が分からなかったの。
だから、智樹君に聞いたの。そしたら、いきなり席を立って私の隣に来て至近距離で教えてくれたり、私の手を握って優しくマッサージしてくれた。
好きでもない、ましてやそんなに話したこともない人に、こんなに触られてしまっている。
どーしたらいいんだろう。
でも、好きでもない人に、接近されるのはちょっと嫌だなー。
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昼休みが終わり掃除時間が始まった。
私は、倉庫付近の掃除で由紀子ちゃんと詩音の2人と同じ掃除場だ。
でも、今日は由紀子ちゃんが欠席だったから詩音と作業分担をした。
「これから、作業が始まります。生徒の皆さんは持ち場に移動をしてください。」
お、ナイスタイミング!
掃除を初めて10分が経った頃、詩音がニヤニヤしながらこちらの方に歩いてきた。
「どーしたの、詩音?
なにかいいことでもあった〜?」
「いい事というか〜。
ねー、咲希。知ってた?」
「何を〜?」
私、なにかやらかしちゃったかな?
「智樹ね、咲希の事好きらしいよ〜!」
「えっ?」
今、私の事を智樹君が…好きって…。
「ナイって、そんな事。だって、詩音みたいに可愛くもないしコミュ障だよ?」
「そんな事ないよ〜!
でも、この話は智樹君本人から聞いた事だからね。」
「そう、なんだ。」
「うん。だから、告白される準備をしてた方がいいんじゃない?」
されるわけないと信じたい。でも、今まで私の事を好きだって言ってくれた人なんていなかったから、なんて返事したらいいんだろう。
それに、どう接したらいいのか分かんないよ...。
「そうだね。教えてくれてありがとう!」
「いえいえ。」
この話をされてから、掃除に全然集中出来なかった。
「あと5分で作業終了です。手洗いを済ませて、着替えをしましょう。」
終わりのアナウンスが流れ、道具を片付けた。
終わったー、でも教室に戻るのは気まずいよ。いや、いつも通りに平常心で行こう。
「フーゥ。」
呼吸を整えて、教室に戻る。やっぱり居心地が悪い。
あんなこと言われたあとだから、頭が困惑している。
まぁ、気を取り直してひとまずは着替えをして授業を頑張ろう!
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次の日、私は智樹君と距離を置こうと決めた。
気持ちを知ったからと態度を帰るのは間違っている。それは十分、分かっているけれど、優しくする事でもっと傷つけるのは嫌だから。
「咲希、おはよう。」
智樹君だ。
少し気まずいけれど、挨拶くらいはしないとダメだ。
「おはよう、智樹君!」
と、言って席に着く。そして、ネームを付けて着席した。
はぁー、相変わらずこの席はあまり気分が乗らないよ…。
「皆さん、おはようございます。今日も、6時間授業ですが頑張っていきましょう!」
安田先生は、元気そうだ。見てる私も少し元気を貰える。
今日もー頑張るぞ〜!
これから、毎日明るく過ごせるといいな〜!
ーなんて、甘いことを今の私は考えていた。
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