忙しさのせいか常に近寄りがたいオーラの先生を公園で見かけると、犬を連れ完全にオフの先生。オフの先生は他の人に知られませんように。私だけが知ってるオフの先生。

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私が勤務する大学病院には名医がいる。艶やかなショートの黒髪と整った顔立ちに真っ白な白衣は清潔感を感じさせ初めて見た人は見惚れる。私もそうだった。でも、先生は忙しいせいか常に無愛想だし元々綺麗系で隙のない顔だから少し怖がられている。患者にも看護師にも。でも、腕はいいし面倒見がいいから嫌われては無い。それでも、今日も先生はこわかったねなんて友達の看護師が言うから無言で頷く日は少なくない。そしてある日、先生よりも腕が悪いと評価が低い歳だけは上の先生が失礼なことを言い始めた。 「きっとオフでも常に医学の勉強をして恋人も友達もいないんだろう。女は愛想が大事だぞ」 それは言い過ぎじゃないかと思い話を逸らそうと思い、口を開きかけたけど変わらず無愛想に必要ありませんと答える神田先生はかっこいい女だった。 少し、先生のことが好きになった。けれど趣味なんてなさそうだし、あってもきっと頭を使う無駄のないことなんだろうと予想し特別仲がいいわけもないから話すきっかけはない。仕事の話だけ。 そんな日を過ごし続け、何かきっかけがないかなぁと休日にまで考えてしまう。せっかくの秋晴れだし、軽い散歩でも行こうかなとサンドイッチを作り手入れの行き届いた綺麗な公園に行くとそこには神田先生がいた。ただ、私は目を見開き少しして瞬きをして目を擦る。なぜなら、先生は犬を連れて困ったように微笑んでいる。とても、穏やかで優しい表情。犬はむかし犬図鑑で見たオーストラリアンシェパードらしく、綺麗なブルーと茶色のオッドアイ。そしてとても大きい。ここら辺は小型犬の散歩をしている人が大きいからその大きさに少しびっくりしつつ、犬の綺麗さと神田先生の見たことない表情に驚いていると先生が犬に話しかける。 「ショコラ、お座りしてないで帰りましょ? お散歩はもうお終い。もう、そんなに不満げな顔しないの。ショコラ、そんなに可愛い顔してもダメよ」 いつも淡々とした表情なのに、先生は甘やかな声で小さな子供に言い聞かせるように話しかける。普段はかっこいい女性だけど、今は完全に愛らしい。 「ワン!」 ショコラという犬は返事をしたかと思うと私の方に。当然、先生に見つかってしまった。固まる先生に、私は慌てて口を開く。 「す、すみません。綺麗で可愛らしいわんちゃんですね。おっきいし目はオッドアイでとっても素敵です」 「え、ええ。まだ子犬だから甘えん坊だけど賢くて自慢の子なの。なんて、親バカよね」 先生は照れながらも、愛犬が褒められたことを嬉しそうに微笑む。眉を下げて。 「ってっきりもう成犬かと。というか可愛い……」 「この子は大きい犬種だから。また半年よ。ショコラを褒めてくれてありがとう。よかったわね、ショコラ」 今のは貴女に言ったんです。なんて言葉は慌てて飲み込んだ。 「あ、あの。よくこの公園にお散歩連れてきてるんですか? ま、また会いたいです」 「ええ、休日はこの時間にここにいるわ。他の日は家の近くの散歩コースだけど。ショコラも貴女を気に入ったみたいだし。ふふ、尻尾をたくさん振って目を輝かやかせてるわ。あ、貴女何か持ってるみたいだから気をつけて。ショコラ、悪戯はダメよ?」 ショコラ、ごめん。君を利用して飼い主である神田先生とまた会うチャンスを作ったりして。 「サンドイッチですね、さすがにわんちゃんにはあげられませんが次は犬用のおやつ持ってきますね」 「あら、よかったわねショコラ」 私が知らなかった神田先生の愛らしい一面を教えてくれたショコラにはそれはもう美味しい犬用おやつを買っておこう。そして、今日オフの先生に会ったこととオフの先生は穏やかで可愛らしいのは誰にも教えないでいよう。こんな先生知られたら取り合いになる。敵は少ない方がいい。今ならまだ職場で先生の可愛さを知る人はいないし。ずるくてごめんなさい先生。そして利用してごめんねショコラ。撫でてと頭を擦り付けて来るショコラの可愛さに罪悪感を感じつつ、先生と仲良くなるために帰ってから犬についてたくさん勉強して話題を考えた。
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