つながり *良平*

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つながり *良平*

 仕事の帰りに本屋に行こうと歩いていると、目の前を結城さんが店に入って行った。  その後を入る。ストーカーか。いやでも自分も行くつもりだったし。    結城さんはビジネス関連の本を見た後、資格のテキストの本棚の前で足を止めた。見上げてじっと並ぶ背表紙を睨んでいる。  そっと横に立ってみた。やっぱりストーカーか。  集中しているのか、気づかない。思わず笑ってしまうと、二度見された。 「かっ、樫井さん。」  大きな目を驚きで見開いて俺を見上げる。徐々に顔が赤くなるのが可愛い。   「十分ぐらい前から横にいたんだけど、全然気づかないし。怖い顔をして本棚を睨んでるし。」 「えっ、恥ずかしいんですけど。」  結城さんの顔がカーッと赤くなったので、目を逸らせるように本棚を見た。   「なにか資格取るの?」 「いえ、見てただけなんですけど、なにか武器になるものが欲しいなあ、と。」 「ああ、まあね。今でもパソコン使ってるでしょ。IT関連なら取れるんじゃない。これとかならテキストだけで勉強できるよ。スマホで問題も解けるし。  社内のリスキリングプログラムは?」 「それも見てるんですけどねぇ。内容が偏っているんで。」 「IT系なら鈴野に聞けば……。」  途中まで言いかけて黙ってしまうと、結城さんは気まずそうに微笑んで俯いた。   「……じゃあ、あとはなにか趣味とか好きなもの?」 「趣味……。」 「好きなのは食べることだっけ?」 「もうっ。作るのも好きなんですよ。」 「へえ?」 「一人暮らしだとそんなに作らないですけど、友達が来た時とかちゃんと作ります。」 「ふうん……、そっか。」  あの男にも作っていたんだろうな。
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