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第十話 もも誕生
ぼたんさんは3ヶ月前に出産した。
元気な女の子。名前はすみれ。すみちゃんと呼んでいます。
ぼたんさんの出産は大変だったぁ。
あたしもお腹痛くなっちゃって、ダブル出産?みたいな。
もらい出産だったら…
いや〜。怖い怖い。
ぼたんさんめっちゃ痛がってたぁ。でも生まれた後のすみちゃんとのスキンシップ素敵でした。
感動です。
あたしはどうだろう。
痛すぎて失神したりして。
う〜、今から心配で眠れないのです。
※
「おぎゃぁおぎゃぁ」
「いない、いない。バァ〜」
「きゃはは」
すみちゃん可愛い♡
「みかんちゃん、調子はどう?」
「すみちゃんが可愛いすぎて、あたし、今幸せで〜す♡」
「ありがとう。ほんと可愛いわぁ。我が子って感じね」
お腹をなでなでして。
あたしも早く我が子を抱きたい。
それにしても、うちの子反応が薄い。
「ぼたんさんの時は、お腹蹴ったりしてました?」
「うん。かなり蹴ったりしてたかもぉ」
「うちの子全然なの」
「心配ね。石井さんに見てもらったほうがいいよ」
あたしは臨時でお腹を見てもらった。
「順調ですよ。標準サイズですね」
「はぁ。この子全然蹴らないんです」
「おとなしいのかなぁ。お名前は決めてますか」
「はい。ももと名付けます」
「そう。ももちゃん。ママが心配してるよぉ。少し蹴って見て〜」
痛ったぁ!
「みかんさん、大丈夫ですか!」
な、何。これが蹴ると言うの。めっちゃ痛い。子宮が壊れるんじゃないくらい痛い。
「はい。大丈夫だと思い、ま、す」
石井さんがあたしのお腹をさすると…
えって顔している。
痛い〜。
もしかして、異常?
「初めてです、こんなに強く蹴るなんて」
今回が初めてで最後になった。
もう蹴ることはなくなったが、逆に大丈夫か心配になってきた。
※
本当に順調と言うほど何も無く過ごして行った。
勇司は勉強が身に入らず休学している。
「勇司ごめんね」
「心配するな。どうだ。そろそろ陣痛が来る頃かと思うのだけれど」
そうだよね。
「手を繋いでもらえる?」
何だかお腹が痛くなってきた。
石井医師に伝えておこうかなぁ。
「勇司、始まったみたい」
「わかった。石井さんに伝えよう」
※
「勇司〜、痛みが早くやって来たよ」
痛い、痛い。もも早く終わりにしようよ〜。
石井医師が来てあたしの様子を見ている。
「ちょっと見て見ましょうか」
また、え〜って顔したぁ。
痛い、痛〜い。
石井医師はあたしに顔を向けにっこりすると
「始めましょう」
と言い電話を掛けた。
出産時様に足で踏むと電話がかかる様に設定してある。
石井医師は助産婦に電話をした様だ。
「みかんちゃんの出産始まるよ」
それから、
バタバタと準備が始まり出産が始まった。
「赤ちゃんの頭が見えてますよ〜。みかんちゃん頑張って。いきんで〜」
「はっ、はっ、ふぅ」
後少しと言う時に…
もも。痛いから早く出てきて〜。
あたしは心の中で叫んだ。
一瞬、気を失った様な気がした。
「生まれましたよ。元気な女の子です」
はぁ。終わったぁ。
おぎゃ おぎゃって言ってる。
ももちゃんこんにちは。
生まれたてのももはしわくちゃだけれど。
可愛い♡
あたし幸せです。
※
まだ痛むけれど、歩けるしお腹も空いています。
「ももちゃん、おっぱいですよ〜」
ももは母乳をよく飲むのだ。
一生懸命飲んでいる姿が可愛い♡
すみちゃんも可愛いけれど、やはり我が子だなぁ。
ももぉ〜。可愛い♡
頬ずりしたくなる。
※
あまり休んではいられないと、勇司は東京に戻って行った。
育児は石井さんとぼたんさんに手伝って貰っている。
ベビーベッドが二台並んでいる。ももどすみちゃんのベッド。
ももはすみちゃんの横ですやすや寝ている。ベビーベッドもお洋服もすみちゃんとお揃い。
双子みたい。
これから楽しみだなぁ。どんな生活になるのだろう。
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