第十二話 ももの育て方

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第十二話 ももの育て方

 ももが超能力を使った日から数日が過ぎた。勇司とはももの育て方について、話し合っていない。  ももがまたいつ超能力を使うかわからない今、あたしの神経は休まらない。    あの時はももが泣いているにも関わらず、かまってあげられなかったのよね?  あたしの記憶では…  そうだったはず。  ももは今ぐっすり寝ている。なんせ背中におぶっているから、起きているかわかる。  寂しがり屋なのかなぁ。  あっ、そろそろ買い物に行かないと。  でも車で1時間かかる。こう言う時都会が便利だよね。財布とトートーバッグを持ち、玄関を出ると、ももが泣き出した。 「ももちゃん、良い子良い子。これからぶーぶーですよぉ」  あたしは背中を揺らす。  なかなか泣き止まない。どうしようぉ。  そくだぁ。牛さん! 「ももちゃん、牛さんのところに行こうねぇ〜」  あたしはももをおんぶして牧場の緩やかな坂を登り、牛舎へ向かった。遠くから「もーもー」と牛達が泣いている。  ももは牛の鳴き声に合わせて「うーうー」言ってあたしの背中を叩いている。  結構痛いんだけど! 「こんにちは」 「お疲れ様です。牛の飼育ありがとうございます」 「いえいえ、仕事ですから。ももちゃん元気そうで何よりです」 「ありがとうございます」   あたしは苦笑いをする。  ももの超能力は個性と見てその都度対応してすれば良いか。  今日はここでゆっくりしようかな。買い物は明日でも良いかなぁ。ご飯はあたし一人分だし。  おんぶしているももを下ろし膝に抱えると、牛が見える位置に座り直す。  ももは「うーうー」言って喜んでいる。  なんだかあたしも「うーうー」行って見たくなり、「うーうー」言ってみた。 「うー うー」  ももはあたしの顔を見てにっこりすると、いつもより大きい声で「うーうー」言った。  あたしは肩に力を入れ過ぎていたんだなと思い直した。  あたしはスマホをポケットから取り出して、勇司に電話をした。 『みかん、どうした?』 「うん。あたしももの側にずっといた方が良いかなと思って。家政婦さんお願いできないかなぁ」 『そうだな。わかった。明日にはなんとかする。今日は俺が行くから』 「うん。ありがとう」  勇司が帰ってきてくれるのは心強い。  家事は家政婦に任せてももと過ごそう。仕事は休職かな。  あたしはどこまでも続く青空を見上げた。  あたしがお母さんなんだから。  ももにはあたしが必要なんだ。
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