第六話 短大生活

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第六話 短大生活

 入学式、ガイダンスが終わり授業が始まろうとしている。  あたしは学生といっても勇司のフィアンセ。勇司のサポートも当然やっていきたい。  授業のスケジュールは無理なく組んでいる。  あたしはキャンパスの中を歩く。短大に関わらずサークルの勧誘が激しい。 「お姉さん、うちのサークルに」 「ごめんなさい。うちの子が小さいからサークルで遊んでいる暇ないの」  と言う文句で片っ端から断っている。  ナンパもあって、東京はやはり嫌だなぁと思ってしまう。  授業が終わると勇司が通っている大学に行く。  学食で待ち合わせをして、勇司が受けている講義の休みの間、話したりご飯を食べたりしている。 「みかんの方はどうなんだ」 「うん。順調だよぉ〜。勇司はどう?」 「うん。問題ない。俺…サークルに入ろうかなと思う」  あたしは目を細くする。 「ま、さ、か、浮気じゃないよねっ!」 「おい、おい。こんな可愛いフィアンセがいるのに、他の女を好きになるわけないだろ」 「心配だなぁ。あっ、そうだ。あたしも入る」 「え〜」  この大学のサークルは他校の学生でも入部できる。だから、あたしが入部してもなんら問題ない。  それに、フィアンセとしてのアピールもできる。 「ねぇ、いいでしょ」  勇司は目を逸らしている。  怪しい!! 「今行こっ」 「ど、どこに」 「サークルにでしょ。あたしが決めてあげるからっ」  あたしは勇司を引っ張る様にキャンパスを歩き回る。 「わぁ、色々なサークルがあるんだね」 「まあな、学生数が多いから、それなりにあるだろうな」  チラシをもらい再び学食に。 「これどう。これもいい!」    懐かしいなぁ。  この楽しい感覚。昔を思い出す。 「俺これから授業だから、みかん、適当に過ごしていて。1時間半後にここで」  勇司はそう言うと手を振って学食を出て行った。 「何にしようかなぁ」  あたしは暫くチラシを見ていた。  あっ!これ、これがいいわ。  あたしは席を立ちA棟205号室を探す。 「あの!A棟はどこですか?」  幾人かに聞きながら探していた。 「ああ、A棟ね。俺これから行くから案内するよ」 「ありがとう。助かる」  あたしはルンルン気分で男の後をついていく。   男はある建物に入ろうとして振り向き「こっちだよ」と扉を開いた。  ん?A棟? 「さあさあ、入って入って」  あたしは怪しいと思いながら中に入る。  男は廊下を進み、奥の部屋の前に立つと、振り向きニッと笑った。  えっ! 「おい、入れよ」 「い、いやっ!」  男はあたしの手を強くあたしを掴み引きずる様に部屋に入っていく。 「いやっ、離して!勇司、助けてー!」  あたしは奥にあるソファに投げられる様に押された。  男はドアの鍵を閉めるとあたしに近寄ってくる。あたしは後退りをする。 「勇司ー!勇司ー!」 「うるせー」  その人はあたしのお腹を蹴り、うずくまるあたしの上に覆い被さった。 「いや、いやっ、よやめてー」  どかっーん  大きな音がしてあたしもその人も音がした方に目を向けた。 「はぁ はぁ。おい、俺のフィアンセからどけ」  勇司の声はドスの聞いた声だ。 「死にたくなかったらすぐにどけ」  勇司は大剣を両手で構えてその人を睨め付けて入る。 「おい。早くどけよ」  その人は呆気に取られている様だ。  勇司の表情がだんだん険しくなり、口を大きく開いた。  勇司の口が淡く光り、赤く、赤く、燃え上がる様に赤くなると。火の玉の様なものがこちらに向かってきた。  火の玉は男の頭上数ミリを通過して窓ガラスにぶつかると爆発した。  ガラスが大きな音を立て、割れて飛び散った。 「キャー」  男はあたしの悲鳴で我に帰り「わぁー」と悲鳴でもない奇声を上げ、這う様に逃げて行った。 「みかん、大丈夫か」 「うん。勇司ごめんなさい。うえーん」  あたしは大泣きをした。  勇司は大剣をしまいあたしを優しく抱きしめ頭を撫でている。 「みかん、怖い思いをさせてごめん」 「うえ〜ん。勇司〜」  暫く勇司の腕の中で泣いたあたしは、顔を上げ勇司と見つめ合う。    チュッ  軽いキスをして抱きしめ合う。 「サークル一緒に回ろうか」 「うん」  
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