第八話 妊娠

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第八話 妊娠

 先月も生理が来ていない。    妊娠したかもしれない。  あたしは早速妊娠検査薬で検査してみた。 『おっ、陽性だわ』  作戦が効いた見たい。  これでぼたんさんの子と同級生になる。 「勇司、おはよう」 「おはよう。みかん」 「今日時間ある?」 「今日は3限までだから夕方には空くよ」 「わかった。夕方空けておいて」 『勇司は喜んでくれるかなぁ』  ※  夕方、勇司が帰宅するのをリビングで待っている。 「ただいま」 「おかえり」  あたしは玄関まで行き勇司に抱きつく。 「どうした」 「リビングに行こっ」 「どうした。今日なんかの記念日だったか?」 「記念日では無いけどね。ご飯食べよう」  勇司は目を細めながらあたしの手料理を美味しいと言ってくれている。  あたしの手料理を堪能した勇司が聞いてきた。 「何かあったのか?」 「うん。落ち着いて聞いてくれる?」 「ああ」  勇司はあたしの話を最後まで聞いてくれた。  その反応は…  あたしの想定を外れていた。 「病院に行ったのか?」 「えっ、まだだけど」 「わかった。姉貴のところに行こう」 「どうして?」 「妊娠しているのか確かめる」 「まだ反応は出ないんじゃ無いかなぁ」  勇司は立ち上がりあたしを見ると 「いや、俺が行ってくる。まだ安定期では無いんだろう。ここで待っていろ」 「うん」  勇司はリビングを出るとそのまま玄関から出て行った。  暫くして…    ガチャ 「みかんちゃんおめでとう」  勇司がお姉さんを連れて帰ってきた。 「まずは検査ね。ちょっと待っててね」  お姉さんはスマホをポケットから出して、電話をかけた。 「もしもし、早く来て」  お姉さんはそう言うと電話を切った。 「…遅いなぁ」  それはそうだ。誰に電話を掛けたかはわからないけれど、どこにいるのか話してないから探しているんじゃ無いかな。 「お姉さん、「どこにいる」が抜けてますが、相手の方はお姉さんを探して無いですか?」 「そうだね。ちょっと見てくる」  お姉さんはリビングを出て直ぐに戻って来た。電話の相手は足立さんだった。 「こんにちは」 「こんにちは」 「足立、みかんちゃん」 「社長、「どこに来て」が抜けていたから探しましたよ」 「あはは、ごめんね。みかんちゃんが妊娠したみたいなの」 「そうなんだ。おめでとう」  その後は大変だった。  検査をするために大学病院に連れて行かれ、血液検査やエコーをとった。 「おめでとうございます。妊娠していますね。安定期はまだ先なので、お腹を冷やしたりしない様に。無理な運動もダメですよ」  みんなが心配してくれているのでありがたいのだけれど、大袈裟になりそうで怖い。  ※  平日、出勤の日は保育園まで送り迎えがあり、毎日医者が保育園で待機をしている。 「みかんちゃん、大変ね」  裕香さんは別な意味で心配みたいだ。あたしも同感だけれど。  たまにぼたんさんが自宅に遊びに来てくれて、いずれはお腹が大きい者通しで、お腹をなでなでしながら話しているのかなぁと二人で笑っている。
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