8人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
;ふるさと
ふるさとの地を離れて七日。
雲ひとつない空とは裏腹に、わたしの心は湿った陰りを帯びている。
いっそこのまま、永久に霧中を彷徨えたなら。
不毛な願いも虚しく、気付けば都が目の前に。
果たして待つのは順境か、逆境か。
これは正しい選択なのか、進むべき道だったか。
確かめる術は、もはやない。
後戻りは、二度と叶わない。
ただ、恵みの雨が降りますように。
家族に幸福が、両親に安寧が訪れますように。
重ねて願うのは、己の屍を超えた未来だけ。
「───お待ちしておりました」
何故ならわたしは、顔も知らないお殿様のもとへ、召し上げられるのだから。
最初のコメントを投稿しよう!