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広大な砂漠を彷徨う二体の“女性”。
その内の一体は足の部品が故障しているのか、もう一体のアンドロイドに支えられ、足を引き摺りながら歩く。
「ユリ……私を置いていってよ」
足を引き摺る彼女が今にも消え入りそうな虚ろの視線を向けるのは、名の通りに“百合”のように白く、透き通った髪の少女。
彼女より一回り小さい少女は華奢な身体で、その細い腕で、彼女を懸命に支えて、冷たく渇いた砂上を進む。
「駄目だよ、ハナ!私達は一緒に行かなきゃ……じゃないと、何の意味も無いじゃない」
諦めかけたハナの瞳に映ったユリの横顔。
決して俯くことのないそれは自分の掌よりも小さいのに“生気”と“勇気”が誰よりも宿っていて。
「もう何処にも私達を迎える場所なんて──」
「煩い!」
「ッ!」
遮られた言葉。ユリの潤んだ眼。その情景が埃を被っていた“記憶”という名の映写機によって、過去を眼前に映し出していく。
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