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吹いてきた風にぶるりと体を震わせた。
ついこの間まで、夏の延長みたいな気温だったのに、この数日でめっきり寒くなった。
秋をすっ飛ばして冬がきた。その季節の変化についていけず、今年は街路樹もまだ青々としたままだ。
それでも道には少ないなりに落ち葉が溜まっていて、それを風がくるくると躍らせている。
葉っぱの動きで判る風の流れ。それが近くの街路樹に向かっていった。
風が木を包み込んだ瞬間、葉っぱの色がみるみる変化した。
緑から燃えるような赤へと色づき、茶色く変色する。そして、風に飲まれた木の葉っぱは、残らず枯れて散り果てた。
まさに『木枯らし』。それを目の当たりにした。でも、のんびり季節を感じている場合じゃない。
次々に並木を枯らし続ける風が、俺の方に向かってくる。
木枯らしというくらいだから、吹かれたら木が枯れるのは当然だけれど、人間の場合はどうなるのだろう。
ちょっとだけ結果が知りたい気もするけれど、自分がそれを体感したい訳じゃないから、風に巻かれぬよう、ここは一目散に逃げるのみ!
木枯らし…完
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