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そのうち、ランディに自分語りめいた人生相談を始める職員も出てきた。
「やっぱあれかな、仕事だけしてる男なんて価値ないのかな……どう思う、ランディ」
嫁が戻ってこない原因。んなもんランディに分かるか、という話である。ランディには嫁なんていないし、今まで社長やその奥さんなど、愛着というものはヒトに対してしか抱いたことがなかった。だから仕事しかしない男は別にダメじゃないっていうか、社長にしたらむしろ仕事だけしててほしいものではないだろうか、とランディは思ったのだが、犬だからもちろん何も言えない。
「あー……でも、そうだな。分かった、ランディ」
でも、なぜかランディに話すと、職員たちの悩みは解決するのである。
「一度嫁に聞いてみるよ。おれに何が足りなかったのか……そしてちゃんと、戻ってきて欲しいって伝える。ひどい結果になるかもしれないけど、そうするしかないな。ありがとな、ランディ」
職員はそう言って、わしゃわしゃとランディの毛並みを荒っぽく撫でた。おかげでランディの毛並みは乱れてしまった。乱れたところに職員の手の温もりがまだ残ってる、ほんのりぬくい。
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