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そうか、もうそろそろお昼か。どうりでお腹がすくはずだ。「天野」さんの手元のシュシュも、ふわふわした甘い食べ物みたいに見えてくる。
「天野」さんは今日も、お花のいい香りがする。ぎゅーっ、て、してくれるかな。と思ったけど、ランディはあきらめた。「天野」さんは立ち上がると、その手を「竹尾」さんの手に回したからだ。
「誰もいないから、いいよね」
「……うん」
そう語り合って、二人はランディのもとを離れた。
誰もいないっていうか、ここにランディがいるのですが。
とはいえ、まあまあ。それは言わぬが花でしょう。
なんて思っていたら、
「待って」
パタパタパタ、「天野」さんが戻ってきて、ぎゅっ! としてくれた。
「ランディ、ありがとね」
「あ、おれも」
と、「竹尾」さん。
ぎゅーっ、も、わしゃわしゃ、もしなかったけど、
「ランディ、ありがとな」
と、耳元でささやいた。
ランディは何も言わない。だって犬だから。
でもランディは、いつまでも見つめていた。二人の後ろ姿を。
そして思った。
今日も最高に平凡で、幸せだな、と。
おわり
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