ランディの人生相談

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「竹尾」さんはしばしそのシュシュをじっと見つめた。そして、そっとポケットに入れた。心なしかふわっ、と気温が高まった気がする。 「明日、渡しとくか。……じゃあ。またな、ランディ」  そう言って「竹尾」さんは行きかけたが、「あっ」と戻ってきて、 「今の話、ふたりだけの秘密な」  と言い置いていった。  秘密も何も、ランディには誰にも話せないのだが。何しろ犬なので。  と思ったが、ランディは固く口を閉じて、「秘密にする」の意を表明したのだった。  ランディのもとに「天野」さんが再訪したのは、その数日後だった。 「ランディ、あのね」  言いつつ、「天野」さんは手首のシュシュを見つめている。こないだ、「竹尾」さんがポケットに入れたのと、同じシュシュだ。パステル色のシュシュは春色で、あたたまった午後にぴったりだった。 「天野」さんはシュシュを見つめながら、 「ねぇランディ、聞いてくれる?」  と尋ねた。  ランディは首を縦にも横にも振らないけれど、聞かないという選択肢などないのは明白だった。なぜならここが、ランディの定位置だったから。
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