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「はぁごちそうさまでした」
グラスに残ったワインを飲み干して花巻さんがほっこりとした笑顔になる。
「お口に合いましたか?」
「はい!とっても。やっぱり森さんてセンスいいですね」
満足そうにそう言う花巻さんのほほはほんのり染まっている。
俺は無意識に彼女を見つめてしまっていた。
「?森さんどうしました?」
花巻さんにそう言われてハッとした。
「あ?もしかして私飲みすぎちゃってます?」
そう言って慌ててほほに手を付けている。
「あ、いやいや大丈夫です、顔に出てないですよ」
あわてて否定する。
「…そ、そうですか、よかった」
そうは言ってもまだ戸惑っているようだ。
だってまだ俺に見つめられているから。
「あの…森さん?」
不思議そうに俺を見つめ返す。
「花巻さん。」
「はい」
「今日はありがとうございました。」
「い、いえ、私こそ」
「俺、花巻さんと二人で食事できて楽しかったです」
「は、はい…私もです…」
グラスを少しずらして座りなおして少し近ずく。
「花巻さん俺、俺の気持ちは変わってないんです。本気だし、むしろどんどん花巻さんのこと…好きになってます」
そう告げると花巻さんは瞳を揺るがす。
「花巻さんの気持ちは大事にするつもりですけど、俺は、俺は花巻さんと付き合いたいなって思っています」
言った。
思ったよりもあっさりと思ったことを口にした。
気持ちを伝えられたらそれだけで胸があったかくなった。
答えが欲しい。
それも俺の望む答えが。
そう思う一方で気持ちを伝えられただけでも、花巻さんに俺の気持ちをわかってもらえただけでもかなり満たされた気がした。
「森さん…。ありがとうございます」
頭がキーンとなるほど続いたかのように思えた沈黙。
でも実際は一瞬ののちに、花巻さんがそう言った。
「正直まだ完全に、元カレのこと吹っ切れているか自分でもわかりません」
「…わかってます」
「元カレの彼女からマウントのメールとか来ちゃうとちょっと悲しくなります」
まだそんなことされてんのか、と正直驚く。
「でも、どうしようもなく森さんにひかれているのも事実です。
ふとした瞬間に森さんのこと考えちゃってたりして、…」
期待を込めて、伏し目がちな彼女をじっと見つめてしまう。
「だから、こんな私でも良かったら、よろしくお願いしたい…です」
俺の方は見たものの、少し自信なさそうに笑ってそう言われた。
…
一瞬開いてしまう。
これって…OK ってことだよね
自分に言い聞かせて…
よっしゃぁぁぁぁ!
心の中でガッツポーズする。
「はぁ、よかった」
俺は息を吐いて、花巻さんを見た。
「断られた時のこと考える余裕さえなかったから」
「え?そうなんですか?」
心底驚いたようにこちらを見る。
「マジです。今考えたら、断られたら仕事とかやばかったですよね?」
「ふふ…。そうですね。私たち多分態度に出やすいタイプですもんね」
「ですね」
そう言って笑いあう。
「スイマセン。もう一杯だけ飲んでいいですか?」
「はい、私もお付き合いさせてください」
そう言って俺たちはスパークリングを頼んで改めて乾杯した。
「はぁ―。さっきと味が全然違う」
「そんなに緊張してたんですか?」
「そりゃするでしょ?」
「森さん、自信あるのかと思ってました」
「こんなこと言ったらきざっぽいけど、好きな女に告白するのに緊張しないわけないでしょう?」
そう告げたら、花巻さんは真っ赤になっていた。
可愛い。俺の彼女はかわいすぎる。
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