手をつなぐ

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「お疲れ様でーす」 俺たちが付き合ったことは瞬く間にチーム内に広がった。 みんな温かく見守ってくれている。 そして公私混同しないところはチームとして最高だ。 そんな昼休み、春木君が彼女が作ってくれたというサンドイッチをほおばりながらつぶやいた。 「なんか意外です」 「へ?」 「なんか森さんてなんつうかこう『俺様』的な感じかと思ってました」 「え?なんで?」 そう思われてる方が意外なんだけど。 「だって、ぐいぐいひぱって言って『俺の女』的な?」 「いやいや俺意外と恋愛初心者よ?」 ぷっ! 「いやいやいや、何の冗談すか?」 いきなりの春木君の大爆笑に戸惑う。 「むちゃくちゃモテて来たでしょう?」 「そんなわけあるか!」 俺は春木君に軽くチョップする。 「痛いっすよ。でも、まぁ森さんはともかく花巻さんはむちゃくちゃ奥手っぽいですよね」 にやにやの春木君をぎっとにらんだ。 でもまぁ、元カレのことも知っちゃってるしなぁ。 そんな理由だけじゃないけど、何となく今までの彼女とは違うっていうか、 慎重になってるなって自分でも感じている。 「まぁ大事にしてるっていうのはよくわかります」 春木君はそう言った後 「でも女って意外と深いっすよ」 と言った。 「え?どういうこと?」 思わず乗り出す。 「あんまりほっとかれると『もしかして私に魅力がない?』とか悩んだりするみたいっすよ」 なんだそれ? じゃぁタイミングっていつなんだよ。 俺まだ手すらつないでないのに…。 そんな話をしてから、何となく花巻さんとの距離の取り方がわからなくなってしまう。 あれ?今までの彼女ってどうしてたっけ? 彼女の部屋に行ってもいい? いや俺の部屋に来てもらうのが先? 一口ちょうだいとかって言っていいの? いやキスした後のほうがいい? え?キスってどのタイミングですればいいの? いやいやその前に手をつなぐんだっけ? ていうか、どうやって手をつなげばいいの? うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 確かに彼女いない歴一年ちょいだけど、そんなこともわからないような年じゃないだろ? 考え出したら切りがない。 「森さん。森さーん。どうします?」 「え?」 しまった。 花巻さんとのデート中なのに、余計なこと考えてしまった。 「あ…と、なんでしたっけ?」 「もうすぐラストオーダーなんですけど、何か追加します?」 「あぁ、そうだなぁ、あったかいお茶でも飲もうかな」 「わかった。じゃたのんどくね」 花巻さんはさして気にする様子もなく、俺に笑顔を見せて店員を呼んだ。 はぁ。 余計なこと考えないで、デートを楽しもう。 彼女の笑顔を見て気持ちを切り替える。
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