彼氏の部屋

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仕事帰りに花巻さんお気に入りの雑貨屋さんの前を通る。 「最近はイースターもメジャーなイベントになってきましたよね」 そう言いながら、卵モチーフの雑貨をショーウィンドー越しに眺める。 「あぁ確かに」 なんだかんだ年中のイベントは増えてきている。 なんでもかこつけてお祝いしたリ、誰かと過ごしたりするのに、 前は抵抗あったけど、恋人ができた今では、それも悪くない。 ちょっと前に花巻さんも言っていた。 『イベントの時って、限定商品とか売っててなんだかわくわくします』 って。 確かに“限定”って言葉には、俺も弱い。 「ちょっと寄っていく?」 少しお店の中をみたそうな花巻さんを気遣ってみる。 するとみるみる間に瞳を輝かせる。 「いいんですか?」 そう言っているけど、そのキラキラした瞳は、『行きたい!』 としっぽ振って喜んでいるのがわかる。 「うん、俺もコーヒーカップ買い換えたいから」 そう言うともう、つま先はお店の入り口に向いていた。 店内は春らしくパステルカラーの雑貨があふれていた。 「あ、これかわいいなぁ」 いや、花巻さんのほうがかわいい。 そんなことを思う俺の脳は春にほだされているのだろうか? ふと見ると、シンプルだけどいい感じの大きさのマグカップ。 「あ、マグカップ」 花巻さんも俺の視線に気づいて、同じ商品を見る。 「こ、これいいですね」 なぜか少し照れている花巻さん。 「?」 その答えはすぐわかる。 そのマグカップはペアカップだった。 もしかして、花巻さんこういうのにあこがれるのかなぁ。 おそるおそる聞いてみる。 「よかったら、お揃いで買わない?」 そう言った瞬間、ばっ!!とこちらを振り向く。 「い、いいんですか?」 はは…。 こんなに喜んでもらえるなんて。 「うん、俺もお揃いとか嬉しいし」 そう言うと、ハッとして真っ赤になる。 「これ買ってさ、俺の家にお揃いで置いておいてもいいかな?」 あまりにもかわいい反応に少し攻めてしまう。 「…え…っと」 そう言った後、小さくうなずく。 「よかった」
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