優しく、大事に

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優しく、大事に

俺の言葉に花巻さんはそっと目を伏せた。 そしてすぐに俺の方に顔を向けて静かに目を閉じる。 それを見て俺はゆっくりと花巻さんの唇に俺のを重ね合わせた。 「…はぁ」 小さく花巻さんの吐息がもれる。 それを聞いて俺のタガが外れる。 ゆっくりと、だけど何度も唇を重ねて、 それはだんだんと早く密に激しくなってしまう。 気付くと花巻さんの体を少し押してしまっていた。 「…!ご、ごめん」 俺は我に返って慌てて体を離そうとした。 すると、花巻さんがぎゅっと俺の服の袖をつかんだ。 「は、花巻さん!?」 「あ、あの、」 どうしていいのかわからない様子の花巻さん。 俺は彼女の手にそっと自分の手を重ねた。 「ごめん、ちょっと焦りすぎた。」 「…」 「大事にしたいから、無理やりには…」 「む、無理やりじゃありません!」 俺の言葉を花巻さんが遮る。 「で、でも、俺ちょっとがっつきすぎッていうか、やさしくできる保証できない」 相変わらずつかまれたままの俺の服の袖に少し力が入る。 「大事にしてるなら、やさしくなくても大丈夫!…です」 「え?」 突然のことに驚いてしまう。 「そ、その、彼氏の部屋に来るのに、そう言うの考えないできたわけじゃないです!」 「…」 「ちゃんと気持ち決めてきてるっていうか、あの、その」 あたふたしている花巻さんに、俺も勘づく。 「つまり、俺とそう言うことになってもいいって覚悟してくれてたってこと?」 俺の言葉にちょっと視線を泳がせながらも、こくり、とうなずく。 「あ、あのこういう、下心ありきな女は、だ、ダメでしょうか?」 ちょっと沈黙した俺に、不安そうに聞いてくる。 「下心って…」 「っ…」 「俺なんか下心どころか心身ともに全力で花巻さんのこと求めちゃってるけど、ダイジョブそ?」 覗き込むようにそう尋ねると、 みるみる赤く染まっていく花巻さん。 「は、はい!よろしくお願いいたします!」 ガバッと頭を下げる彼女に思わず笑いそうになる。 「で、でも、できればお手柔らかに…」 ぷぅ!もう限界。笑ってしまった俺にやっぱり膨れている。 「了解。なるべく善処します」 そう言って、ゆっくりと花巻さんに覆いかぶさる。 「あ、できたら俺のこと、『たかや』って呼んでくれたらうれしいな、和沙」 「ぜ、善処します、た、タカヤ」 かたことで俺の名前を呼んだ和沙の唇をじっくりとふさいだ。
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