大人の時間

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大人の時間

初めてのHは本当に甘く、長くもあっというまだと感じた。 シャワーを浴びて俺と同じにおいのする和沙の髪のにおいが鼻孔をくすぐる。 さすがに『一緒にお風呂』は断られた。 そんな急には…だよな。 それでも俺のスウェットに包まれて安心した寝顔を見せる和沙に、俺のテンションは上がってしまう。 ていうか、やったからって名前呼びすんのってアリ?ナシ? 「ん…んん…」 頭をなでていた手を止める。 やばい、起こしちゃったかな? ぼんやりと瞼を開ける和沙。 「あ、森さん…」 まだ寝ぼけてるのかな? 「おはよ、和沙」 その俺の一言で、一気に覚醒する。 ガバッと起き上がって、あたふたする。 「あ、あのおはようございます!」 ぷっ! そのあわてぶりに思わず吹き出してしまう。 「…あ、えっと…」 髪の毛の分け目まで真っ赤だ。 「コーヒーでも飲む?」 あまりにもかわいい和沙の行動に俺のほうが持たない。 照れ隠しにベッドから、起き上がる。 「あ、は、はい」 布団を鼻まで引っ張り上げて、俺の様子を見てる。 俺の心臓は驚くほど速くなる。 和沙が俺を見ている。 たったそれだけの事なのに…。 ポットをセットして、コーヒーをセットする。 「顔洗ってきたら、さっぱりするかも」 カウンターから声をかける。 「…は、はい」 ことんっとベットから降りる音が聞こえて、 和沙の足音が洗面所へ流れていく。 やがて水の音が聞こえる。 おそらく昨日買っておいたスキンケアセットを使っているだろう。 想像してにやけてしまう。 ポットから湯気が出て、俺はそれでコーヒーをいれる。 「あ、あのぉ…」 おずおずとキッチンを覗く。 可愛い。 「ん?どうしたの?」 平常心を保つ。 「洗面所にあったタオル借りたんですけど、いいですか?」 あぁぁぁぁ可愛い! いいに決まってる。 「ふふ、いいよ」 俺の答えににっこりとなる。 「コーヒーはいったよ」 そう言ってお揃いのマグカップをもってソファーへ運ぶ。 なんだか落ち着きなさそうにしながら、 俺の後をちょこちょこついてくる。 「はい、どうぞ」 「あ、ありがとうございます」 俺の隣に座って、コーヒーをすする和沙。 思わず見つめてしまう。 「…あ、あの…」 「あ、ごめん。熱くなかった?」 見つめてしまっていたことを取り繕うようにそう言う。 「あ、うん。あったかくて…おいし」 にっこり笑うその姿の鎖骨にちらっと見えた赤いあざ。 あぁ、俺和沙を抱いたんだ。 実感として心にその事実が落ちていく。 ドキドキするけど、自分のモノだっていう安心感を同時に味わう。 「…た、タカヤ…」 「…え…」 片言で俺の名前を呼ぶ和沙に思わず目を見開いてしまう。 「こ、コーヒーありがとう…」 「あ、う、うん、どういたしまして」 あぁ、なんて至福の時間だろう。 付き合ったばかりなのに、 頭ではわかっていても、心にせかされている。 「や、やっぱ名前呼びは…変?」 何も言わない俺に、和沙が不安そうに聞いてくる。 「いや、うれしい。うれしいよ」 大事なことだから2回言った(笑)。
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