歓迎会

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歓迎会

「それでは望月君を歓迎して—カンパーイ!」 ホントに歓迎はしているが、それは建前でもある。 うちのチームの飲み会は、 ホントに無礼講でみんな社外で集まるのが好きだ。 もちろん俺たちも。 俺と和沙は言わずもがな隣同士の席になる。 だからと言って二人きりの世界になったりしない。 だってそれはルール違反でしょ? 「花巻さんそのネイルいいねぇ」 「そうなんですよ。この前雑誌に載ってたお店で…」 諸星さんを中心に女性スタッフに囲まれて熱弁する和沙。 明日俺とデートだからって作ってもらったネイルらしい。 さっきここに来る途中でとってきて早速つけたみたいだ。 「彼女モテモテっすね」 俺は俺で春木君を中心とした男子グループと盛り上がる。 「あの…、」 その輪の中にいた望月君がおずおずと尋ねてくる。 「ん?」 「森さんと花巻さんって…」 「そうなんだよ、付き合ってるんだよねぇこれが」 俺の代わりに春木君が答える。 「…あ、そうなんですね」 その表情にちょっと陰りがあったのが、 俺の胸に引っ掛かる。 「花巻さんってば、こんなむっつりにつかまっちゃって」 「ほんと、おじさんは心配だよ」 「なんなんすかマジで、さり気にディスるのやめてください」 春木君と鏑木さんに軽くチョップする。 「二人より絶対森さんのほうが安パイだろ?」 周りの男性スタッフにもツッコまれている。 「悔しいことに、まじで森さんいい男なんすよねぇ」 おいおい春木君。 おとして持ち上げるとか、お前は天才か。 「春木君もいい男だよ、若干チャラいけど」 そう言って笑うと、周りも笑いの渦にのまれた。 「森さん、そう君飲み物どうしますか?」 そこで、俺らのグラスが空になってることに気付いた和沙が声をかける。 「あ、じゃ、俺ウーロンで春木君は?」 「俺はもう一杯ビールで」 「はーい」 注文をタッチパネルに打ち込む和沙。 「もう、ほんとかわいいわね」 重山さんは和沙のことをとっても気に入っている。 自分の娘みたいに思っているようだが、 和沙は『お姉さんみたい』と言っている。 「森君、花巻さんに変なことしたら許さないからね」 「…いや変なことって…」 思わず苦笑い。 「もう、重山さん。 二人とももういい大人なんですから、 その発言は野暮ってもんですよ」 と、春木君が笑っている。 「だってぇ、かわいいんだもん」 その言葉にほかの女子スタッフもうなずいている人がいる。 「森君だけが独り占めするのはずるい」 「独り占めなんてしてないっすよ」 「みんなの和沙ちゃんなのにぃ」 そう言って和沙をよしよしする重山さん。 よしよしされて、真っ赤になっている和沙。 ホントほのぼのしちゃう。 でもそんな様子を少し真剣な目で見つめている存在がいた。
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