告白

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「じゃあお疲れっしたぁー」 「お疲れさまでした」 「あ、私も旦那が迎えに来たから行くね」 みんながそれぞれ家路につく。 解散後気づけば花巻さんと春木君と俺だけになっていた。 「俺ちょっと〆ていきますけどお二人どうします?」 春木君の問いに俺は花巻さんを見る。 「あ、じゃ私も…」 そう言った後俺の方を見た。 「…あ、じゃ俺も〆てくか」 俺はちょっとおなかをたたいて二人に笑いかけた。 「よし、じゃ決まり。俺行きつけあるんすよ」 そう言って春木君は俺たちを先導するように歩き出す。 「行きましょうか」 そんな春木君の背中を追うように俺は花巻さんを促して一緒に歩きだす。 春木君の行きつけは大衆食堂みたいな雰囲気のお店だった。 「なんにします?俺もう決まってるんで」 そう言って彼は俺らにメニューを渡す。 ラーメンお茶漬けおにぎり…。 マジで〆に特化してるなぁ。 「俺はお茶漬けかな」 「じゃ、私は梅味噌のおにぎりで」 「了解っす」 そういうと春木君はすぐにオーダーを通した。 ブー 俺のスマホが鳴った。 見ると姉貴からのメッセージっぽかった。 「大丈夫っすか?彼女さんとか?」 春木君は変に気を回してくれる。 「いや、姉貴だよ」 そう言って携帯を見ると、明日俺んちに来るという連絡だった。 こんな夜中にしてくる連絡かよ。 そう思いながら画面を閉じる。 「大丈夫ですか?」 今度は花巻さんに聞かれる。 「はい、大した用じゃないし明日のことなんで」 正直に答える。 ぶー すると今度は花巻さんの携帯が震える。 「ちょっとスイマセン」 そう断ってスマホの画面を見る花巻さん。 そしてすぐ唇をかみしめるようなしぐさを見せた。 「だい…じょぶですか?」 その表情にあの日の彼女がリンクしてちょっと心配になる。 「…あ、あぁはいスイマセン」 そう言ってすぐに笑顔を作ったけど、それ、うまく笑えてないよ。 「お待たせしました」 そのタイミングで、おにぎりがやってきた。 「わぁおいしそう」 「で、でしょ?ここの食事めっちゃうまいんですよ」 春木君も空気をしっかり読んで盛り上げる。 「お先にどうぞ」 俺もそう言うと、花巻さんは 「スイマセン、じゃ遠慮なくいただきます」 そう言っておにぎりを口に運ぶ。 はむはむとおにぎりをはむ姿がとてつもなくかわいい。 俺、何かの魔法にかかってるかなぁ。 どうかしてる。 仕事でかかわりがあるとはいえ、こんな短期間で彼女のことよく知りもしないのに、どんどん好きがあふれてくる。 「森さん見過ぎっすよ、そんな腹減ってたんすか?」 春木君がそう言って笑う。 「あ、ごめんごめん」 と言って俺もはは、と笑ってごまかす。 春木君には気づかれたかも。 俺が見ていたのはおにぎりじゃなくて…。 まぁ、でも気の利く春木君だから、野暮箱とは口にしないだろう。 すぐに俺たちの食事も運ばれてきて、 そのあとはたわいもない会話で、 俺ら3人は楽しい時間を過ごすことができた。
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