告白

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漫画や小説みたいにリアルはそんなにとんとん拍子とはいかない。 それでも俺は、俺の本気を花巻さんに伝え続けた。 休憩中に声をかけるようにしたり、みんなと一緒ではあるけどランチに誘ったり。 花巻さんは徐々に俺に心を許してくれているように感じた。 「あれ?花巻さん?」 ある日ランチに出た時、花巻さんを呼び止める声がした。 振り向くとスーツの一団がいた。 その中の一人がにっこり笑って、 「あ、やっぱり花巻さんだ」 俺らに近ずいてきた。 「千景、俺ら先戻るぞ」 「おう」 千景と呼ばれたその男はほかのスーツ軍団から離れて花巻さんのところへやってきた。 「久しぶりです」 「あぁB社の安岡さん、ご無沙汰してます。」 どうやら知り合いらしい。 「花巻さんお知り合い?俺ら先戻りますね」 こういう時すぐに気を回せる春木君。 その言葉に促されるように俺らは安岡千景さんに軽く会釈をして、会社に戻った。 「B社って前花巻さんが仕事もらってたとこですね」 会社に戻って食後のコーヒーを飲みながら春木君がつぶやく。 正直気になって仕方ない。 「そうなんだ。そう言えば友達が言ってたなぁ」 「なんすか?」 「B社との合コンはあたりだって、結構B社の人とお知り合いになりたいって子多いみたい」 ちょっと派手なイメージだけど意外と硬派な諸星 紗栄子さんがそう言う。 「あぁ、でもさっきのスーツ集団見てたらスペック高そうですよねぇ」 春木君が宙を見ながらつぶやく。 「あらぁ、うちのチームもなかなかにスペック高いわよ」 「あざっす」 春木君と諸星さんはそんな話をしていたが、 二人の会話は俺の耳をすり抜けていった。 元仕事相手にあんな風にわざわざ声かけてくるか? いやいや、花巻さん仕事丁寧だから、また何か頼みたいのかも? だとしたら会社通すだろう? あぁぁぁ、頭ぐちゃぐちゃだ。 だいたい、俺だけが花巻さん狙ってるわけじゃないって、今までなんで思いつかなかったんだ! 「もりくーん、だいじょうぶ?」 「え?」 諸星さんの声にハッとする。 二人が俺の顔を見て笑っている。 「まぁ前からそうじゃないかなって思ってましたけど」 「案外わかりやすいわね」 え?え?え? 「もう、彼女の気持ち考えてじっくり動くのはいいけど、距離が近いからって調子こいてると、かっさらわれちゃうわよ」 「え?何がですか?…」 いや、俺これ平常心保ててないよね? 「なーんか森さんってちょっと残念イケメンですよね」 「い、いや…なんだよ」 てんぱる俺に対し二人は、 「まぁだいたいチーム内では全員気付いてるけど、みんな応援してるからね」 「優しいだけがいいわけじゃないっすよ、タイミングって大事ですから」 と言って笑った。 はぁ、何だよ。 俺そんなにがっついてなかなぁ? そう思いながら窓の外を見ると、社に入ってくる小走りな花巻さんが見えた。 でも二人の言う通り、いつまでも見守ってるだけじゃダメなのかもしれない。 もう一度きちんと気持ち伝えとかなきゃだな。 それにしても、俺の気持ちみんなにバレバレだったとは…。 恥ずかしすぎる。
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