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5.家族の季節
病気が見つかった。
犬にではない。私である。
何年か前から痛みは感じていたのだけど、仕事が忙しかったので痛み止め頼りで放っておいたら、ある日激痛で歩けなくなった。
手術はおおよそ成功し、ちょっぴり失敗し、入院はさらに長引いた。
残念なことに案外痩せはせず、体力だけ失って、よろよろと帰宅した。散歩はおろか階段の上り下りすらできないので、犬用のスペースがある部屋に間借りすることになった。犬は「どうしておまえがここに?」という表情をしていた。
散歩の時間になっても、いつものようにきゅーんと催促はしなかった。
やっと歩き回れるようになり、犬に挨拶をした。彼はいの一番に、服の上から手術痕をくんくん嗅いで、こちらを見上げたなんとも言えない表情。「怪我したのか?」とか聞いていそうな顔。
リハビリがてら狭い庭を歩く。犬は後ろをついてくる。だんだん快復して、数ヶ月ぶりの散歩。犬はリードを引っ張らずゆっくり、振り返りながら歩く。
子犬時代はかわいかった。でも今のほうがもっと愛しい。甘やかすんじゃなく、お互いに甘えられる。信頼がある。飼い主バカかもしれないけど。そんな感じだ。
完治した今は、がんがんリードを引っ張る。しつけ教室の先生が見たら「教えたじゃないですか」と呆れるだろう。
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