4、セックスフレンド【R18】

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 巻き戻して、また最初から聞き直す。今度はメロディではなく歌詞を聞く。歌詞をよく聴くと、昨夜に聞いたレージの話と歌詞が何か所もに被る。さらに動画の投稿された日時を見ると、それはレージと離れて一人暮らしを始めたあとのタイミングだった。家に帰ってから葵の動画チャンネルの1曲目〜5曲目を聴いてみた。どれもいい歌だったが、強いて言えば4曲目から直接的な表現が少なくなり言葉に深みが出ていたのだが、この6曲目の完成度は別格だった。恋しい、会いたい、という気持ちがひしひしと伝わってくる詞もさることながら葵の歌声が甘く切なく、酷く胸に刺さる。 「レージのこと、そんなに好きだったんだ〜……」  葵の想いを知ると、昨日の行為が申し訳なくなる。こんなに好きな人がいるのに投げやりに手近な男のモノをしゃぶっていた葵が可哀想になった。でもその相手が見知らぬ男ではなく、葵に対してある程度の尊敬や情を持ち合わせている自分でまだマシだったかな、と豊は考える。ぼんやりと歌声を聴いていると、傷跡を隠して俯く顔を思い出す。それと豊からキスした後の、緊張がほどけた心地よさそうな顔。続いてあの甘ったるい声が頭の奥で再生されると妙な気分になりそうになり、豊は動画の再生を止めた。切り替えるべく、鞄から難解な楽譜を取り出して指の動きの確認を始める。楽譜の隅の走り書きを目にすると練習中の厳しい葵が頭に浮かび、昨夜の淫らな姿は意識的に頭の隅に追いやった。
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