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1、スリーピースバンド
どんなやつだと思う、と金色の短髪で耳にジャラジャラといくつもピアスをつけている木田実光がポテトを食べながら聞いた。向かいの席に座る肩まで届く長さで緩いパーマをかけた黒髪の鴨下豊は、わかんないけど、とアンニュイな顔で長い前髪をかきあげた。
「マネさん曰く、超有望新人らしいよ。ハイトーンボイスが綺麗で歌が超絶上手くて、作詞作曲1人でできちゃってギターも弾けるんだって」
実光は眉をひそめて言った。
「それ、俺らいるか? なんでそいつソロでデビューしないの」
「……マネさんが言うには悪いやつじゃないんだけど、結構性格のクセが強いから1人でデビューさせるのは微妙らしい」
爆弾かよ、と天を仰ぎ見た実光に豊は諭した。
「いや、俺らもたいがい爆弾だって。デビュー寸前でボーカルが薬物で逮捕されたバンドのベースとドラムとかまとめて契約解除されたっておかしくなかったんだから。チャンスもらえてラッキーって思わなきゃ」
ベースの豊とドラムの実光、さらにもう1人ギターボーカルを加えたスリーピースバンド“Eternal Shine”はデビュー寸前に解散になった。ボーカルは薬物の所持と使用で逮捕されたのだが初犯ではなかったため実刑を食らって塀の中に入り、バンドは永遠の闇に消えた。
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